転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


424 地面の下にもね、お部屋があったんだよ



 どうやら変なお風呂場がこのお家の一番奥のすぐそばだったみたいで、もうちょっと進んだらすぐ突き当りになったんだ。

「あれ? ロルフさん。階段があるよ」

「うむ。中央にないと思ったら、このような場所にあったのか」

 このお家、入口のとこに階段があったけど、その他には二階に上がる階段が無かったんだよね。

 だからロルフさんは、真ん中あたりにないと不便なんじゃないかなぁって思ってたみたい。

「じゃが、確かにこの方が効率的なのかもしれぬのぉ」

「効率的?」

「うむ。館を作る時は普通、中央に階段を作る事が多い。しかしそれは中央に入口を作る事が多いからなのじゃよ」

 もし自分のお部屋が二階にあったとしたら、入口のとこに階段があった方が便利でしょ?

 だから住む人の事を考えると、お家の真ん中に入口を作る事が多いんだから、階段もお家の真ん中に作るのが多いんだって。

「じゃがこの館は、一番端である入り口に階段が設置してあったからのぉ。中央にもう一つ階段を作るよりは、このように反対の端に作る方が効率的なのじゃよ」

「そっか。二階に行こうって思った時は。近い方の階段を使えばいいもんね」

 ロルフさんのお話を聞いて、僕はここにあるのはそんな理由なのかぁって思いながら階段に近づいたんだ。

 でもね、僕はそこである事に気が付いたんだ。

「ロルフさん。この階段、下に行くのもあるよ!」

「ほう、下りの階段とな」

 最初に見つけた時は登ってく階段しか見えなかったんだけど、近づいてみたら登ってくとこの反対側に降りてく階段を見つけて、僕はびっくりしたんだ。

 だって地面の下に降りてく階段なんて初めて見たんだもん。

「ああ、そう言えば家の者が、この館には地下があると言っていましたわ」

「バーリマンさん、この下にもお部屋があるの?」 

「ええ。確か少し小さな倉庫と、ワインセラーとして使う部屋があるという話よ」

 なんと、このお家には地面の下にもお部屋があるんだって。

 でもさ、地面の下だったら窓なんかないでしょ?

 だったら真っ暗なんじゃないかなぁ?

 そう思った僕は、バーリマンさんに聞いてみたんだ。

 そしたらね、普段は真っ暗な方がいい事もあるんだよって教えてくれたんだ。

「今のように暑い季節だと、太陽の光を長時間浴びると日に焼けてしまうでしょ?」

「うん」

「それと同じでね、書物や美術品、それに楽器も種類によっては日の光によって影響を受けてしまうものがあるのよ」

 びたびたの洗濯物も、お日様に干しとくと乾いちゃうでしょ?

 それとおんなじで、楽器とかは日が当たるとこに置いとくとからからに乾いて壊れちゃう事があるんだって。

 それに絵とか木でできた像とかも、からからに乾いちゃうとひび割れたりしちゃう事があるらしいんだ。

 だからね、そう言うのは地下に作ったお部屋に置いとく方がいいんだってさ。

「それにのぉ、地下の部屋は地上と違って温度の変化が少ないのじゃよ」

「そうなの?」

「うむ。先ほどギルマスが、地下にはワインセラーがあると言っておったであろう? ワインに限らず、酒というものは高温を嫌う。じゃから今のように暑い季節でも比較的温度が上がりにくい地下に、それらを保存する部屋を作るのじゃよ」

 ロルフさんちもね、お酒をしまっておくためのお部屋が地面の下に作ってあるんだって。

 お父さんもお酒をいっぱい飲むけど、そんなお部屋、僕んちには無いでしょ?

 だからそれを聞いてびっくりしたんだ。

「先日ルディーン君が作ってくれた、ベニオウの酒があったじゃろう? あれもな、すぐに味の劣化を防ぐため我が家のワインセラーにしまったのじゃぞ」

「そうなの? お父さんなんか、おいしいおいしいってあっと言う間に飲んじゃったのに」

「あら。私も全部は飲み切らずに、まだ大切にワインセラーにしまってあるわよ」

 ロルフさんだけやなくって、バーリマンさんもおいしいお酒だからいっぺんに飲まないで取ってあるんだよって言うんだ。

 でもね、僕はそんな事よりバーリマンさんのお家にも地面の下にお部屋がある事にびっくりしたんだよ。

「バーリマンさんちにも地面の下のお部屋、あるの?」

「ええ。というか、錬金術ギルドにもあるわよ。地下室」

「ええっ!?」

 バーリマンさんが言うにはね、ポーションの材料の中にはあったかいとこに置いとくとダメになっちゃうものもあるらしいんだ。

 だからそう言うのをしまっとくためのお部屋が、錬金術ギルドにもあるんだって。

「そんな事より、せっかく地下への階段を見つけたのじゃ。降りてみたくはないか?」

「うん! 僕、地面の下に行ってみたい」

 せっかく目の前にあるんだもん、探検してみたいよね。

 だから僕、ロルフさんに行ってみたいって言ったんだけど、でも一個だけ心配な事があるんだ。

「あっ、でも窓が無いんでしょ? だったら真っ暗で何にも見えないんじゃないかなぁ?」

「それなら大丈夫なはずよ。魔道ランプが設置されているはずだから」

 このお家には誰も住んで無いけど、でもお掃除はしないとダメでしょ?

 だからランプにだけは魔道リキッドがちゃんと入れてあるんだって。

「そっか。じゃあ大丈夫だね」

 と言う訳で、降りる方の階段のとこについてたスイッチを入れて、探検開始!

 僕は先頭でずんずんと降りてったんだ。

「あれ? 終点かと思ったら、折れ曲がって続いてる」

 僕ね、二階に上がってくのとおんなじくらい降りてけばお部屋に着くと思ってたんだ。

 でも下までついたと思ったら階段がそこで折り返しになってて、そこからもっと先に続いてたもんだからびっくしちゃった。

「ああそれはね、なるべく深い所に作った方が、部屋の中の温度が下がるからよ」

 地面のしたって、深くなるほど涼しくなるらしいんだよね。

 だから地面の下のお部屋は、こんな風に深いとこに作るのが普通なんだってさ。

「なんか作るのが大変そう」

「ええ、そうね。もし魔法が無かったら、こんな地下室は作れないかもしれないわね」

 こういう地面の下のお部屋はね、魔法使いさんが穴を開けたり、クリエイト魔法で土を石に変えたりして作るんだって。

 だからこんなに深いとこにあるのに、実は上のお家を作るより簡単にできちゃうんだよってバーリマンさんが教えてくれたんだ。

「そっか! じゃあ、お勉強したら僕んちにも作れるかなぁ?」

「う〜ん。作れない事もないだろうけど、ご両親はあまり作って欲しいとは思わないのではないかしら?」

「え〜、なんで? お部屋が増えるんだよ? うれしくない?」

「確かにそうだけど、その部屋を使うには魔道ランプがいるでしょ? それに、地下に降りる階段の場所の分だけ、家の中が狭くなるもの」

 あっ、そっか。

 お部屋ん中に階段作ったら邪魔かも。

 それにあんまり魔道リキッドを使っちゃダメだよって村長さんが言ってたっけ。

 じゃあやっぱり、僕んちに作るのは無理かなぁ。

 そんな事をバーリマンさんと話してるうちに、階段の一番下までついたんだ。

「わぁ、木の棚がいっぱいならんでる」

「ええ、あそこにワインや蒸留酒の樽を並べて保管するのよ」

「それにここ、ほんとにさぶいや」

 そこはね、壁沿いにいっぱい木で作った棚が並んでて、それにお外と違ってちょっと寒かったんだよ。

 だからそう言ったら、そんな僕にロルフさんは笑いながらこう言ったんだ。

「今の時期、外から来たらそう思うじゃろうな。しかし、寒い時期に来ると暖かく感じるのじゃぞ」

「あったかいの?」

「うむ。外が熱ければ涼しく感じ、寒ければ暖かく感じる。温度が一定だと、そのような不思議な事が起こるのじゃ」

 寒くてあったかいなんて魔法みたいだなぁって思いながら周りを見てると、今僕たちがいるとこの奥に扉がある事に気が付いたんだ。

 そう言えば、ここにはおっきな倉庫もあるって言ってたっけ。

「ロルフさん。あっちのお部屋も見て来ていい」

「ああ、もちろん。ここはルディーン君の館になるのじゃからな」

 ロルフさんがいいって言ったもんだから、僕はさっき見つけた扉んとこまで走ってって扉を開けてみたんだ。

 そしたらそこは、壁も天井も、それに湯釜で魔法でつるつるの石になってる小さなお部屋だったんだよね。

「わぁ、とってもきれいにつくってある。それにちょっとこっちの部屋の方がさぶいかも」

「うむ。扉が閉めてあった分、外気が流れ込まなかったからであろうな」

 地面の下にあるって言っても、お外とはつながってるでしょ?

 だからさっきのお部屋は、閉め切ってあったこのお部屋よりあったかかったんじゃないかなぁってロルフさんは言うんだ。

 ん? 待って。

 じゃあさ、このお部屋の中は温かくなりにくいって事だよね。

「ロルフさん。ちょっと魔法、使ってみてもいい?」

「魔法じゃと? 何をやるつもりなのじゃ」

「あのね、このお部屋をもっとつべたくしたらどうなるのかなぁって思ったんだよ」

 僕はロルフさんにそう言うと、このお部屋の奥の方を指定してクールの魔法を使ったんだ。

 この魔法は指定した範囲の温度を下げる魔法だから、この寒いお部屋の中で使ったらきっともっと寒くなると思うんだよね。

 その上このお部屋は地面の下にあるから、、いっぺん冷たくしたらなかなかあったかくならないはず。

「おお、これはまた、かなり気温が下がってきたのぉ」

「うん。さっきロルフさんが、このお部屋はお外のあったかい風が入ってこないっていって言ったでしょ? だから僕、クールの魔法でどっかの空気をつ下手くしたらお部屋の中全体がさぶくなるんじゃないかって思ったんだ」

 クールの魔法を隅っこにかけただけで、このお部屋全体が寒くなってきたって事はさ、氷の魔石を使って冷やせばお部屋全体をもっと冷たくすることができるって事だよね。

「ルディーン君。まさかこの部屋全体を冷蔵庫にしようと考えておるのか?」

「うん。お部屋の中にある冷蔵庫は、中を冷やすのにいっぱい魔力がいるでしょ? でもここだったらお部屋全体が最初っからつべたいから、冷蔵庫にしたらいいんじゃないかなぁって思ったんだ」

 僕がそう言うとね、ロルフさんはちょっとぽかんとしたお顔になったんだよ。

 でもすぐににっこりと微笑むと、

「いやはや、とんでもない事を考え付くのぉ。じゃがそれは確かに、かなり有用なアイデアじゃな」

 そう言って僕の頭をなでてくれたんだ。



 部屋全体が冷蔵庫や冷凍庫に。

 この発想は今でこそ当たり前にありますが、普通は考え付かないかもしれません。

 ただ、ルディーン君は前世の記憶から辿り着いたのではなく、ただ単に大きな冷蔵庫や冷凍庫があれば冷たいお菓子がいっぱい作れるなぁと思っただけだったりします。

 まぁそんな発想は、子供だからこそ出てくるのですけどね。


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